リーガルエッセイ

公開 2020.10.22 更新 2021.07.18

なぜ警察官の不正捜査は後を絶たないのか?

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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警察署に行ってきました

先日、自宅から最寄りの警察署に行ってきました。
私が落とした物を、どなたかがご親切にも交番に届けてくださり、その落とし物が警察署で保管されていたので、それを引き取りに行ったのです。
本来、3か月以内に引き取りに行かなければならないのですが、私は、3か月前に落とし物を保管していると連絡を頂いた際、「来週中にでも引き取りに伺いますね」と言っていたにもかかわらず、仕事の忙しさを理由に延ばし延ばしにしていたところ、ついに、先日、警察署から、「3か月が経ちましたので、明日までに引き取りに来ないとお返しできませんよ」と電話を頂き、急ぎ引き取りに行ったという次第。
本来ならそのような連絡など1件1件できないため、そのまま引き取り不能になってしまったところ、私が、一度、引き取りに行くと言っていたために、その記録を残しておいてくださり、ご丁寧に、引き取りに来なくていいのかという最終確認の連絡をくださったのです。
落とし物を保管してくださっている警察署の会計課におそるおそる行ったところ、身分確認や落とし物の内容を速やかに確認してくださり、あっという間に手続きを済ませてくださいました。
周りの警察官も部屋を出たり入ったりされていて、みなさん、とてもお忙しそうでいらしたのに、対応してくださった若い警察官は、期限を過ぎて落とし物を取りに来るという招かざる客に対しても、目を見ながら、書類の記入箇所を丁寧に説明してくださり、笑顔で接してくださったことがとても印象的でした。
保管して頂いたこと、ご丁寧にも連絡をくださったことのお礼をお伝えして帰ろうとしたのですが、今度は、警察署内で迷子になってしまい、しばらくうろうろしていたんです。
すると、若い警察官が声をかけてくださり、出口まで案内してくださいました。
普段、仕事で警察のかたと接する機会は多いのですが、被害者の代理人として、「早く捜査を進めてください」とお願いしたり、弁護人として、依頼人の取調べに関し抗議したり、という関わり方がどうしても多くなってしまいます。
今回、一市民としてお世話になることで、改めて、いかに一市民としての自分の生活は、警察官の地道な業務に支えられているかをしみじみ実感するとともに、若い警察官に親切にして頂き、ご迷惑ばかりおかけして申し訳ない思いとともに、心温まる思いがしました。

個別の事件で終わらせるのでなく

そんなときに、たまたまある2つの報道を目にしました。
1つは、スピード違反の取り締まりをする警察官が、速度違反が確定できていないのに、うその速度を測定することで速度結果の記録を偽造して反則切符を作っていたとして逮捕されたという事件。
もう1つは、警察官が、知人に、微量の覚せい剤が付着したビニール袋を手渡して、自分の職務質問を受けるように依頼した上で職務質問し、その状況についてうその捜査報告書を作成したということで覚せい剤取締法違反の事実で書類送検されたという事件。
2件目については、ご本人が事実を認めていないとも報じられており、事実関係は今後解明されていくことになると思います。
ですので、2件目については、事実があったものとしてお話しすることはできないとは思いますが、覚せい剤といえば、少し前に、警察官が、被疑者の車内を捜索する令状をとるために、被疑者の車内に覚せい剤の空パケ(薬物を入れる小袋)を仕込んだ事実が認められて、捜査手続きに重大な違法があったとして一部無罪判決が言い渡されたという事例もありました。

警察官が捜査の過程で不正を働いたり、うその証拠を作って、これによって犯罪を作り出したりするということは、言うまでもなくあってはならないことですよね。
このような事件が続くと、適正に捜査が行われているほかの事件への影響も甚大です。
こんなとき、関与した警察官を懲戒免職にしたり、刑事責任を問うたりすることは当然としても、その個別の警察官への非難、その警察官を監督すべき立場にあった警察官への非難だけで終わってしまっては、根本的な解決にはならないのだろうなと思います。
市民を命がけで守り、正義を実現しようと警察官になったはずの人が、なぜこのような行為に至ったのか?そして、なぜそのような人が複数出てきてしまうのか?うその証拠を作ってまで何を得たかったのか?そのような発想を持つに至ってしまったことに組織として取り組むべき課題がないか?ということが検証される必要があるのではないかなと思います。
もちろん、そのような検証はなされているのだとは思います。
それでもなおこうした報道が続くということは、まだ不十分な点があるはずです。
弁護人の立場で、本来処罰されるべきでない人が犯罪者に仕立て上げられてしまうという事態を全力で阻止しなければならないと考えていることはもちろんですが、先日丁寧に対応してくださった若い警察官の顔を思い浮かべたとき、一市民としても、このような事件がなくなることを心から願う気持ちです。

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