リーガルエッセイ

公開 2020.07.09 更新 2021.07.18

落とし物を拾ったら?そのまま自分の物にしてしまったら?

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
<メディア関係者の方>取材等に関するお問い合わせはこちら

落とし物が無事発見されました

先日、自宅の鍵を落としてしまいました。
一通り心当たりの場所を探し回っても見つからず、混乱した頭のまま、途方に暮れて近所の交番に行ったところ、警察のかたが、まず、すでに落とし物として届けられていないかすぐにPC上で確認してくださり、届けられていないことがわかると、すぐに、遺失物届の提出をするよう案内してくださいました。
鍵を入れていたポーチの形状、いつ、どこで落としたと思われるか、などを丁寧に聞き取ってくださり、5分程度で手続きは完了。
「あなたが落としたと思われる物が届けられたら、すぐにご連絡しますね。あまり落ち込まないように」とおっしゃって頂き、交番を後にしましたが、正直申し上げて、「あんな小さなポーチを、わざわざ交番に届けてくれる人がいるかな」とあまり期待ができず、不安でいっぱいでいたのです。
そうしたら、落とした日から2日後の今日、所轄警察署の遺失物係から「それらしきものが見つかりました」と連絡を頂き、落とした鍵がポーチごと交番に届けられたことを知りました。
聞けば、これを見つけてくださったかたは、交番に届けてくださった後、お名前も名乗らずに立ち去って行かれたとのこと。
落とし物が見つかったという場所と交番とはそれほど近くもありません。
落とし物を発見し、これを、ご自身もいろいろご用事があったであろう中、わざわざ時間を割いて交番まで足を運んでくださって届けてくださったことがただただ申し訳なく、また、本当にありがたく感謝の気持ちでいっぱいになりました。
ところで、この落とし物に関しては、遺失物法という法律があって、そこでいろいろなルールが定められていることをご存じですか?

遺失物法は落とし物拾得や返還についてのルール

遺失物法というのは、落とし物を拾った場合やこれを返還する場合に関する手続きを定めた法律です。
遺失物法は、落とし物を拾った人は、速やかに、拾った物を、落とし主に返すか、または、警察署長に提出しなければならないという義務を定めています。
落とし物を拾って、そのまま自分の物にしてしまったら、刑法で定める遺失物横領罪という犯罪になってしまいます。
でも、落とし物を拾った人も、すぐに落とし物を交番まで届けられる状況とは限りませんし、交番が少し遠くて、届けるためには交通機関を利用しなくてはいけないなどということもあるかもしれません。
落とし物を拾った人が、届け出の義務ばかりを課されて、それが負担になってしまうというのでは、あまりに酷ですよね。
この点、遺失物法では、落とし物を届け出るにあたって要した費用がある場合は、その費用を、その後落とし主に請求することができる権利を定めています(期間制限があります)。
また、落とし主がわかった場合は、その落とし主に、「報労金」を請求することができることが定められています(期間制限があります)。
報労金の金額は、落とし物の価格の100分の5以上100分の20以下に相当する額とされていて、たとえば、落とし物が1万円だったとき、これを交番に届けるなどした人には、落とし主に、500円から2000円の報労金を請求する権利があるのです。
さらに、落とし主が現れないまま3か月の保管期間が過ぎた場合は、落とし物を届け出た人は、落とし物をもらえるという権利があります(期間制限があります)。
落とし物が、携帯電話だったらどうでしょう?
携帯電話には、たくさんの個人情報が入っていますよね。
これを、3か月が過ぎたからといって、拾った人が自分の物にできるとなると、不都合だと思いませんか?
この点は、遺失物法で例外として定められていて、携帯電話、運転免許証など個人情報が含まれた物については、仮に落とし主が現れないまま3か月経っても、拾った人がこれをもらうことはできないことになっています。

そして、今お話ししてきたのは、路上などで落とし物が発見されたケースです。
落とし物が、駅やホテルなどの施設で発見されたケースでは、これを拾った人は、その施設の管理者に届け出をすることや報労金の金額は施設と折半になることなど、路上で発見されたケースとは少し違ったルールになっています。

実際には、今回、私の落とし物を交番に届けてくださったかたのように、お名前も名乗らず、そのまま立ち去ってしまわれるかたもいらっしゃるとは思います。
でも、法律で、落とし物を拾い、これを届けてくださったかたの権利が定められており、また、実際ご負担もかかっているのですから、拾った側が、落とし主にお金の請求をするということは当然あります。
その際、スムーズにやりとりができればよいのですが、このお金のやりとりに関しては、警察が介入できるものではなく、あくまでも、拾った側と落とし主との間の話し合いによることになるため、場合によっては報労金の額をめぐりトラブルが生じることもあるかもしれません。
落としたお金の金額があがればあがるほど、トラブルが生じる可能性は高いともいえそうです。
落とし主が困っているだろうと急ぎ届けてくださったかたの気持ち、無事落とし物が見つかったことでの落とし主の感謝の気持ちがかみ合って、「急いで届けてよかった」「届けて頂いてありがたかった」と気持ちよく返還の手続が進むといいですよね。

弁護士へのご相談予約で、
初回相談60分無料 ※ ご相談の内容によっては、有料となる場合もございます
些細なご相談もお気軽にお問い合わせください
弁護士へご相談可能な時間帯
平日:10:00~最終受付18:00 /
土日祝:10:00~最終受付17:00

こんな記事も読まれています

CONTACT

法律相談ご予約のお客様
弁護士へのご相談予約で、
初回相談60分無料 ※ ご相談の内容によっては、有料となる場合もございます
些細なご相談もお気軽にお問い合わせください
弁護士へご相談可能な時間帯
平日:10:00~最終受付18:00 /
土日祝:10:00~最終受付17:00
弁護士へのご相談予約で、初回相談60分無料 ※ ご相談の内容によっては、有料となる場合もございます
弁護士との初回面談相談60分無料 ※ ご相談の内容によっては、有料となる場合もございます