勾留延長決定 ― 京都アニメーション放火殺人事件

勾留延長決定 ― 京都アニメーション放火殺人事件

検察官が勾留延長請求 裁判所は延長を決定

先日、こちらのエッセイで、京都アニメーション放火殺人事件の被疑者の弁護人が、裁判所の勾留決定に準抗告を申し立てたものの、準抗告が棄却されたこと、その判断を不服とした弁護人が、さらに最高裁判所に特別抗告を申し立てたものの、これが棄却されたということをとりあげました。
勾留という身柄拘束について、弁護人不服申立てとこれに対する裁判所の判断が注目されていたところですが、実は、並行して、10日間の勾留期間は着々と経過していました。
準抗告や特別抗告の申立ては、これによって、勾留を一時的にストップさせる効果があるわけではないのです。

検察官は、この10日間の勾留期間経過前に、裁判所に対し、勾留延長を請求しました。
そして、裁判所は、検察官の請求に応じ、6月15日まで勾留期間を延長すると決定したと報じられました。
今回は、勾留延長の話をとりあげます。

勾留延長とは

被疑者の身柄拘束は、原則として10日間と定められています。
検察官は、10日以内に、被疑者の処分、つまり起訴するのか否かを決めなければなりません。
でも、法律で、例外的に、勾留期間を延長することが認められています。
裁判官は、「やむを得ない事由があるとき」は、検察官の請求により、勾留期間を10日間延長することができると定められているのです。
そして、やむを得ない事由があるとき、とは、事件が複雑だったり、証拠の収集が困難だったりして、勾留期間を延長してさらに取り調べるのでなければ起訴不起訴の判断が困難な場合であるとされています。
事件が複雑というのは、たとえば、被疑者が複数名いたり、被疑者や関係人らとの間で供述に食い違いがあって、その吟味が必要になる事件などをいいます。
証拠の収集が困難というのは、たとえば、事実を解明するためには、ある関係人から話を聞かなければならないのに、その関係人に事情があって、なかなか話を聞けず、10日以内には調整できない事情があるなどの場合をいいます。
身柄拘束というのは、人の自由に直接制限を加えるものですので、原則10日間という期間を延長することについては、裁判官も慎重で、「本当にやむを得ない事由があるといえるか」と緻密な判断をしている印象があります。
たとえば、単に、「被害者取り調べ未了」などといって勾留延長を請求しても、それだけだと、最初の10日間になぜ被害者を取り調べられなかったのか、また、おそらく警察官はすでに被害者の取調べをしているであろうところ、なぜさらに検察官も取り調べる必要があるのか、ということがわからず、延長すべきやむを得ない事情がないとして勾留延長が認められないということもあり得ます。
なぜ、改めて検察官が被害者を取り調べる必要があるのか、そして、なぜ10日以内にそれを行えなかったのかなどを詳しく説明する必要があるのです。
そして、裁判官が、検討の結果、検察官は10日間の延長を請求しているけれど、せいぜい5日間で十分だと判断して、5日に限って勾留期間を延長するという決定をする場合などもよくあります。
弁護人としても、勾留期間が不当に延長されないように、検察官や裁判官に働きかけをします。

私自身も、検察官が10日間の勾留延長を請求した事案で、裁判官に意見書を出し、また、直接連絡をし、その事案で起訴不起訴を決めるための証拠としてはどのようなものが必要か、そして、それはすでに収集されていること、仮に収集されていないものがあるとしたら、それは本来10日以内に捜査できると思われる理由、にもかかわらず、それができていないのは捜査の怠慢であることを主張し、延長を認めないよう働きかけたところ、延長期間が3日間になったり5日間になったりしたという経験があります。

不当に勾留期間が延長されてしまった場合には、これに対して不服を申し立てる準抗告の手続きをとることができます。

今回は、やむを得ない事由があるか?

今回の事件について考えてみます。
多くのかたが犠牲になった重大事件であって、責任能力の判断次第で起訴されれば死刑も見込まれる中、犯行時の責任能力に関する判断は、起訴か不起訴かの判断に大きく影響すること、そして、被疑者の体の状況に鑑みれば、通常のペースで取り調べを行えるとは考え難く、おそらく1日に取り調べを行える時間も限られているであろうこと、取り調べを踏まえた裏付け捜査が必要になることなどからすると、通常であれば勾留延長は当たり前のようになされる事案だと思います。
ただ、やはり今回問題視されるであろうことは、被疑者の体の状態が果たしてこのような長期間の勾留期間に耐える状態なのか、また、逮捕まで10か月近くあったことを考えると、その間に起訴不起訴の判断のために必要な証拠収集は概ねできているのではないか、被疑者が、これから隠滅しうる証拠など存在するのか、そもそも被疑者に証拠隠滅が現実的に可能な状況なのかという点だと思います。
報道によれば、弁護人は、不当な取り調べがあったとして検察官に抗議するとともに、供述証拠を精神鑑定の資料としても用いないよう求めているとのこと。
このような弁護人の抗議を受け、検察官は、どのようにして被疑者の供述の任意性や信用性を担保していくのかも気になるところです。
今後も注目していきます。

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