
- 元検事弁護士 (第二東京弁護士会所属)
- 高橋 麻理
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。2002年検察官任官。東京地検、大阪地検などで勤務後、2011年弁護士登録。元検察官の経験を生かして、刑事分野の事件を指導、監督。犯罪被害者支援にも真摯に取り組んでいる。
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。2002年検察官任官。東京地検、大阪地検などで勤務後、2011年弁護士登録。元検察官の経験を生かして、刑事分野の事件を指導、監督。犯罪被害者支援にも真摯に取り組んでいる。
大阪府寝屋川市が、新型コロナウイルス対策の特別定額給付金を、二重払いしてしまったと報じられました。
市民からの申請に対して振り込んだ993件について、二重払いをしてしまったとのこと。
トータルで2億1960万円もの金額が誤って余分に振り込まれてしまったようです。
現在、市が振込先の市民のかたに、謝罪と返金をお願いする連絡をしていると報じられています。
このように、振り込みの過程でミスがあり、本来振り込まれるはずの金額を超えて誤って振り込まれたとか、そもそも振り込まれる予定もなかったのに誤って振り込まれたとか、そのようなことは、私たちの日常に起きてもおかしくないですよね。
そのようなことがあったときの対応次第で、犯罪が成立することもあり得るというお話をしてみたいと思います。
Aさんの銀行口座に、あるところから10万円が振り込まれる予定だったとします。
しかし、誤って、100万円が振り込まれてしまったのです。
振り込まれるはずの金額が10万円であることは間違いありません。
Aさんもそのことをよくわかっていました。
それなのに、銀行窓口に行って、振り込まれた100万円を払い戻してもらったら、その行為は詐欺罪にあたります。
また、窓口でなくATMから引き出したとしたら、その行為は窃盗罪にあたります。
自分の口座に、そのようなお金が振り込まれるはずなく、誤って振り込まれたものだと知りながら、窓口で払い戻しを受けたり、ATMから引き出したりしたら、それは犯罪になりうるのです。
Aさんは、本来そのようなお金が振り込まれることはないとわかっていたのですから、それを払い戻したりせず、銀行や振り込みをした人に「間違って振り込まれているようです」と言うべきだったからです。
では、誤って振り込まれたお金を、振り込みをした人に返さなければならないかという点についてはどうでしょう?
誤って振り込まれたお金は、本来、受け取る側に、それを受け取る法律上の原因がありません。
ですので、そのようなお金については、仮に自分が誤って振り込まれたことを知らなくとも、相手から返してくれと請求されたら、利益が現存する範囲で返す必要があるのです。
このたび、寝屋川市で起きてしまったミスについては、データ入力の重複をチェックするシステムにトラブルがあったことが原因ではないかと見られているそうです。
振り込まれたかたも混乱されたことと思います。
また、返金のための作業には、多くの職員のかたが、懸命に取り組まれているのだと思います。
無事に、トラブルが起きることなく、すべての返金作業が完了されるといいなと思っています。