リーガルエッセイ

公開 2020.04.10 更新 2021.07.18

緊急事態宣言 東京地裁で民事訴訟期日の多くを取り消し

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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緊急事態宣言の期間中の民事訴訟の期日を取り消し

4月7日、特別措置法に基づき、新型コロナウイルス感染が拡大している東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡の7都道府県を対象に緊急事態宣言が発令されました。

そして、その緊急事態宣言を控えた7日昼過ぎころから、東京、横浜、埼玉、千葉の裁判所から、事務所に連絡が入り始めました。
緊急事態宣言の期間中に入っている民事訴訟の期日について、取り消します、という連絡でした。

数日後に控えた期日も取り消されたため、私たちも、その連絡を受け、急遽依頼者のかたに報告するといった事態となりました。
取り消されたのはいいけれど、では、その後、次の期日はいったいいつ開かれるのか、という点はまだ決まっていません。

今後のコロナ情勢を見守る必要もあるでしょうし、また、これだけ一度にたくさんの期日がいっせいに取り消され、次回期日の調整が必要になるのですから、次の日程を決めるのもそれなりの日数を必要とすることでしょう。

なお、まだ報道の限りでしか情報を得ておりませんが、一部の案件については、予定通り裁判等が行われるものもあるようです。
たとえば、DV防止法に基づいて、裁判所に、暴力を振るう配偶者からの接近を禁止する決定を出してもらう場合などは、緊急に裁判が行われる必要性が高いため、予定通り実施されるものと報じられています。

裁判の期日の変更って許されるの?

そもそも、このような裁判の期日変更は、簡単に認められるものではありません。
民事裁判については、法律で、「顕著な事由がある場合に限り」期日の変更が許されるとされています。

準備不足や自分にとって不利な形勢であることを理由に裁判の結論が出るのをできる限り引き延ばしたいと考える人もいるかもしれず、そのような人からの期日変更のお願いが簡単に認められてしまうと、裁判が不当に長引いてしまいますよね。

一方で、たとえばご本人が法廷に行くことになっているのに、ご本人が体調不良で外出もできない状態であるなどという場合にも一切変更が認められないというのは困ります。
そこで、実務では、まず、期日変更を希望する場合、なぜ変更が必要かということを書面に記載して裁判所に提出します。
そして、裁判所は、紛争の相手方の意見も聞いた上で、変更を認めるかどうか判断することになるのです。

今回は、当事者のどちらかが希望して裁判所が判断するという対応ではなく、裁判所が、非常事態宣言が発令されるという事態を踏まえ、取り消しを決めたというものでした。

弁護士として何ができるかを真摯に考えていきたい

訴訟のご依頼を頂いている依頼者のかたは、その訴訟の内容も置かれた状態も違いますが、みな、トラブルの渦中にあるわけです。
裁判も調停も、基本的には、1か月に1回くらいの頻度で期日が入ります。
この頻度自体、依頼者のかたにとっては、とてもゆっくりしたものに感じられると思うのです。
この貴重な、1か月に1回の期日が取り消されることで、解決が遠のいてしまう、ともどかしい気持ちになるのは当然です。
そして、この情勢で、問題は、裁判だけではありません。
日常生活の中にも、休校となって長時間家にいるストレスでイライラする子どもたち、そのような子どもを置いて仕事に行かなければならない状況、仕事に行きたくても行ける状態になく、仕事を休むことで経済的不安に陥っている状況など、今直面しなければならない問題が山積しているかたもいらっしゃると思います。
そのような中、裁判も、その他の問題もいっぺんに降りかかって閉塞感でいっぱいの方もいらっしゃることと思います。
弁護士として、この情勢を変えることはできなくとも、裁判を今すぐ開くことはできなくとも、この状態で少しでも依頼者のかたが抱える問題が前に進み、依頼者のかたが、「少しずつ前に進んでいる」と実感することができるように、何ができるかということを真摯に考えていきたいと思います。

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