リーガルエッセイ

公開 2021.05.10 更新 2021.08.13

熟年離婚で気をつけるべきポイントとは? ドラマ「リコカツ」第4話

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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リコカツ第4話を見て~『熟年離婚』で問題になること~

今、第4話を見た直後です。
第4話にして、突如、ハグの絶妙な力加減やハグの際の髪の扱いなどを習得し、ハグの完璧な理想形をやってのけてしまった緒原さんのせいで、心臓が止まるんじゃないかってくらいドキドキしています。
そんな中、冷静を装い、今回は熟年離婚にスポットを当ててみたいと思います。
このドラマでは、ふた組の熟年離婚カップルが登場します。
今回は、さきさんのご両親について急展開がありましたね。
さきさんのお母様がなぜ離婚を考えたのかについて、夫が自身の浮気を認める発言をしたことがショックだったなどと言っていました。
これまではあからさまな浮気をしても絶対に認めなかったのに、今回、軽い口調で「浮気の決定的な証拠をとられちゃったな」と言うことで浮気を認めた、そのことが許せなかった、とのこと。
徹底的に隠そうとする態度は不誠実だという見方がある一方、隠そうとするということは、結局一番大事なのは妻であり、その妻との関係を悪くしたくないという愛情の表れだという受け止め方もあるのですね。
ただ、ドラマの中では、お母様がご自身の健康診断の結果を深刻な表情で見るという場面もありました。
今後触れられていくのだと思いますが、もしかしたら、健康診断の結果を受けて、自分はいつまでも今の状態で元気に過ごせるわけではないのだという現実に直面し、自分は終わりある人生をどう生きるのかということを真剣に考えたとき、そこに夫の存在が見えてこなかったのかもしれません。
熟年離婚と一言で言っても、長い結婚生活があったのですから、その間に起きたことはそれぞれ違うわけで、ひとくくりにはできないはず。
でも、熟年離婚というとき、離婚を切り出すのは妻側で、切り出された夫としては、「そんなまさか」という反応を示すというケースが多いように感じます。
ドラマの中でも、妻が今さら一人で生活できるはずもない、どうせ早々に家に戻ってくるだろう、離婚なんて本気で言っているはずはない、などという夫側の声がところどころで出てきます。
一方で、長年、いろいろ思うところがありながらも家族の形を維持してきたが、子どもが独立したら、お金がたまったら、離婚しようなどとひそかに計画している妻。
こういった熟年離婚のケースでは、

  • ①一方が離婚に応じないというとき、離婚が認められるか
  • ②財産をどうわけるか

ということが大きな問題になってくることが多いように思います。
特に、①離婚が認められるかについては、離婚を切り出された側が、長年の結婚生活で相手が感じていた不満、違和感、決意などに全く気付いておらず、離婚を切り出されて初めて事態に直面することが多い上に、これまで、自分がいなくては何もできないだろうと思っていた相手から自分が離婚を切り出されたことでプライドが保てなくなるなどという感情が芽生えることもあり、離婚するかどうかというところで話し合いが難航してしまうこともあります。
その場合は、調停手続きを利用するのも一案です。
調停も、二人の話し合いではあるのですが、これを二人きりで行うのではなく、調停委員が間に立って、お互いの思いを説明してくれます。
第三者から改めて説明を受けることで、ようやく、相手の離婚の決意がゆるぎないものなのだと初めて理解できるというかたもいるでしょう。
それでも事態を受け入れられず、離婚に向けた話し合いができない場合には裁判での解決を目指すことになります。

また、仮に離婚については合意できたとしても、②財産をどうわけるかというところで暗礁に乗り上げてしまうケースがあります。
家計に入ってきたお金は、家、預金、保険など形を変えたり、家族の日々の生活費、子どもの教育資金などとして出て行ったりしますが、結婚生活が長くなると、それぞれの金額も大きくなり、また、複雑化します。
夫婦のどちらかが家計を管理していたり、自分だけで管理していた財産があったりすると、財産を分ける前提として、分ける対象となる財産の全体像を把握するだけでも一苦労。
家などの財産は、その価値をどう評価するかという点も争いになります。
熟年離婚という場合、妻が家族を支えるために仕事をやめたり抑えて働いたりしているケースも多くあります。
そうすると、これまでいろいろなことを我慢しながら家族を支えてきて、今後一人で生きていくにあたって経済的基盤を固めておかなければと考える妻と、突如離婚を切り出された上に長年自分が働いて築き上げてきた(と思っている)財産の多くを手放すなんてとんでもないと考える夫との間でし烈な争いが起きることもあります。

ドラマに出てくるさきさんのご両親の離婚は、今お話ししてきたような熟年離婚のケースとはちょっと違うかもしれません。
第4話で、さきさんのお母様が「自分の貯金が2000万円たまったら離婚しようと思ったの。そして2000万円たまったから離婚するの」などと言うセリフがありました。
詳しくはわかりませんが、この2000万円はお母様がご自身で仕事をする中でためてきたお金と言えそうです。
ただ、このお金も当然に全額お母様のものになるか、というとそこは本来わからないところ。
もちろん、夫が応じれば別です。
でも、夫が、その2000万円は夫としての自分の貢献があったからこそ稼げたお金であって夫婦の財産だと主張した場合、財産分与の対象となる可能性があります。
夫も有名企業に勤めていたというストーリーになっているようなので、逆に夫の給与や退職金についても妻の貢献があってこその財産として財産分与の対象になるでしょう。

第4話を見ていると、さきさんのお父様は、離婚にも応じ、またお母様の貯めてきた2000万円について財産分与の対象であるなどという主張もしないのだろうなと感じられましたが、一般的には、熟年離婚というと、離婚するかどうか、仮に離婚には合意するとして財産をどう分けるか、ということなどをめぐって争いになることが多くあります。
一般的に、財産分与の金額も大きくなることが多く、特に女性の立場からすると、今後の生活のために、獲得すべきものは獲得する必要があることを考えると、早めに弁護士に相談し、いかに離婚を切り出すかというところから綿密な戦略を立てて臨んだほうがよいかもしれません。

法律とは全然関係ない話だったので、触れずにここまできましたが、実は、私が一番心動かされたのは、最後の場面。
さきさんが、ご両親がいよいよ離婚するんだと思ったとき、最初は明るく話をしていたけど、緒原さんから「君も傷ついているのではないか」と言われて堰切ったように、自分は一人になるんじゃないか、帰る家がなくなるんじゃないかという思いで、寂しい、悲しいと言って大泣きする場面です。
これを見て、私は、うれし泣きや人の身に起きたことについて辛くて泣いてしまう、ということはよくあるけれど、自分自身のことでつらかったり悲しかったりして泣くということはもう何十年となかったなあと気づかされました。
「寂しい」とか「悲しい」などという感情を感じることは悪いこと、できるだけ避けなくてはいけない感情で、そういう感情には蓋をして無理やりポジティブになろうとする傾向が自分にはあるように思います。
みなさんはいかがですか?
特に、離婚の準備をしているかたは、いろいろな不安に押しつぶされそうになりながら、それでも、これから自分が一人で生きていかなくてはいけない、子どもを自分が守っていかなければならないなどという思いで、感情に蓋をしながら、歯を食いしばって前に進もうとされているかたが多いのではないかなと思うのです。
寂しいとか悲しいとか思い始めたら、前に進めなくなってしまいそうで。
でも、この場面を見ていて、ときには、こうしてネガティブと思われる感情であっても感じきって出し切ることも必要なのかなと思いましたし、そういう感情を安心して吐き出せる存在の大切さも感じました。弁護士として、お客様に、「この人にならどんな感情でも伝えて大丈夫」と思ってもらえる存在でありたいなと思いました。
第5話放映後また更新します!

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