リーガルエッセイ

公開 2021.04.23 更新 2021.07.18

SNS上にあふれている「フェイクニュース」について

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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フェイクニュースを流すことは犯罪?

フェイクニュースって言葉、最近よく聞くと思いませんか?
フェイクニュースというのは、簡単に言うとうそのニュースのこと。
もちろん、一言で「うそ」と言っても、ある内容がうそなのかどうかということが客観的に決まることばかりではないでしょうから、厳密に、フェイクニュースなのかどうか、というところを突き詰めると、考え方が分かれるものもあるかもしれませんね。

私は、フェイクニュースというと、以前、アメリカの大統領選挙前に特定の候補者を貶めるようなデマがソーシャルメディア上で拡散されたこととか、国内で大きな地震が発生したとき、動物園からライオンが逃走しているというデマが、嘘の写真と一緒にSNS上で投稿され、拡散されたことなどを思い浮かべます。
でも、最近で言うと、やはりコロナの関連でしょうか。
総務省が公開している資料の中に、コロナに関する間違った情報や誤解を招くような情報として、たとえば「コロナは熱に弱く、お湯を飲むと予防に効果あり」「日本で緊急事態宣言が発令されたら3週間ロックダウン」「コロナの影響でトイレットペーパーが不足する」などといったものがあるとして、それらのニュースに接した人がそのニュースを信じたかという統計をとったものがあります。
たしかに、新型コロナウイルスの感染が拡大する中、コロナに関するさまざまな投稿がSNS上ではあふれているように思います。
コロナ関連のフェイクニュースと一言で言ってもいろいろありますが、たとえば、感染拡大の影響で〇〇がなくなる!とか社会は〇〇となる!とか人々をあおるような内容のものは、コロナについて確かな知識がまだまだ行き渡っていない人々の中に、ぽんとセンセーショナルな情報を投げ込んだらその波紋はどんなに大きいものになるだろう!という、社会が不安に陥るのを楽しむ心理状態がありそうです。
特定のお店を名指しして、「ここのお店にはコロナ感染者がいます」などと発信する内容のものは、対象となる相手にうらみがあってその相手に嫌がらせをしてやろうという気持ちだったり、他人を嫌な気持ちにすることで発信する人自身が自粛生活の中でたまったストレスを解消したいという気持ちだったりがあるのかもしれません。

このようなフェイクニュースを発信すること自体を犯罪とする国もあるようです。
日本では、ただフェイクニュースを発信したこと自体を処罰するという法律はありません。
でも、フェイクニュースを発信したことによって生じさせた結果、生じるであろう危険などによっては犯罪が成立することもあります。
実際、冒頭で挙げた、動物園からライオンが逃げたという投稿をした人は、業務妨害罪として逮捕されたと報じられていました。
この投稿のせいで動物園には問い合わせの電話が100件を超えたそうです。
大きな地震があった後の大変な時期だったというのに。
投稿のせいで、動物園の職員のかたは、殺到する問い合わせの電話対応に追われたわけで、そのような行為は、動物園の業務を妨害する行為として業務妨害罪にあたると言えます。
フェイクニュースを発信したことで業務妨害にあたるケースとして、ほかには、「あの店の従業員がコロナに感染した」といううそのニュースを発信した場合も考えられますね。
業務妨害以外の犯罪で言うと、たとえば、「Aさんが、本日、〇〇罪で逮捕されました」などといううそのニュースを発信したとしたら、この内容は、Aさんの社会的評価を下げる事実を指摘したものだと言えるので、名誉棄損罪にあたる可能性があります。
ほかにも、そのフェイクニュースを流す行為がどのような意味を持つか、ということによっては、犯罪が成立することがあるのです。
もしかしたら、最初に発信したときには、送る相手が驚く反応を見てみたいというちょっとした悪ふざけの気持ちだったかもしれません。
でも、送った内容は、送った相手がこれを拡散すれば、意図せずしてあっという間に広がってしまいます。
発信にあたっては、これが世間に広まったら迷惑をかける相手がいるのではないか、傷つける相手がいるのではないか、そんなちょっとした想像をする必要がありそうです。

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