「勾引状(こういんじょう)」とは?詳しく解説いたします!

「勾引状(こういんじょう)」とは?詳しく解説いたします!

被害者に「勾引状」は不相当?

先日、特殊詐欺事件に関わったとして窃盗未遂罪の事実で裁判になっていた男性に対し、執行猶予付きの懲役刑が言い渡されたと報じられました。
そして、報道によれば、その判決で、裁判官が、被害者であり高齢でもあるかたに勾引状(こういんじょう)を執行して証人尋問を行う措置が相当とは言い難いと述べたとのこと。

勾引状って普段あまり聞く機会ありませんよね?
「勾引(こういん)」というのは、裁判所から、「〇月〇日〇時に〇〇裁判所の法廷にきて、あなたの見聞きした体験などを証言してください」と呼び出されたのに、これに応じなかった人を、強制的に連れてくるという手続きのこと。
そして、裁判所が「この人については、強制的に連れてきていいですよ」とお墨付きをあたえるものが勾引状。

証人となる人自身が犯罪となるようなことをしたわけでもないのに、強制的に裁判所などに連れてこられてしまうなんて、なんだか乱暴だなと思いませんか?
でも、やむを得ないんです。
法律では、裁判所は、原則としてだれでも証人として出頭させて尋問を行う権限を持っていると定められています。
どういうことかというと、原則として、だれもが、証人として証言し、司法に協力する義務があるということ。
証人という言葉、日常でもよく見聞きしますが、正確には、「裁判所に対し、自分の体験した事実や体験した事実から推測した事実を供述する第三者」と定義されます。
証人は、自分が体験した事実を報告する立場の人であって、その人の見聞きした体験が語られることにこそ価値がある。
だから、代替性がないんです。
その人しか話せないことであるはずなんです。
だからこそ、呼び出しに応じてくれない人には、やむを得ず、強い手続きが用意されているのです。

無理やり連れてくるという以外にも、その前段階のペナルティがあります。
証人として呼び出されたのに正当な理由がなく出頭しない場合には、行政罰としての10万円以下の過料とか、刑罰としての10万円以下の罰金などのペナルティがあり得ます。

今回取り上げた報道で勾引状が出された証人は被害者でした。
被害者のかたが体験した事実は、間違いなく、公訴事実を証明するための事実認定に不可欠となるはず。
でも、被害者のかたは、ご家庭の事情を理由として出頭できないとおっしゃったそうです。
これに対し、検察が裁判所に求めて勾引状の発布を受け、強制的に裁判所に出頭させようとしたが、それでも応じなかった。
この経緯に関し、判決の中で、裁判官は、被害者の立場にあるかたを勾引しようとするその手続きが相当ではないと述べたとのことなのです。

被害者のかたが法廷で証言するということは実現できなかった。
じゃ、どうなったか?
被害者が捜査機関に対して話をした内容をまとめた供述調書が証拠として採用されて、それを用いて事実認定がされたようです。

これを聞くと、供述調書があるんだったら、最初から、わざわざ被害者を法廷に引っ張り出すようなことはせずに、供述調書を証拠として事実認定すればいいじゃないかと思うかもいるかもしれません。
このあたり、ちょっと込み入った話になりますが、ある人の体験を証拠とするときには法廷での証人尋問で証言してもらうことが大原則とされているのです。
どうしてかというと、刑事裁判で問題となっている事実というのは、被告人の有罪・無罪、有罪としてその責任の重さを決めるとても大事な事実。
だから、その事実を認めるための証拠調べは厳格でなくてはいけないとされています。
ところが、ある人がこんな体験をしたよ、と言っている供述調書には誤りがまぎれこみやすいんです。
たとえば、本当にその人はある事実を見聞きしたの?暗くて見えなかったんじゃないの?仮に正確に見聞きしていたとして、ほかの体験とごっちゃになってない?記憶があいまいになってない?仮にちゃんと記憶できていたとしても、それを記憶のままに正確に捜査官に話せているの?体験した人が言おうとしていた内容が正確に表現されているの?ということなど。
にもかかわらず、供述調書が無条件にそのまま証拠として事実認定がされてしまうと、間違った認定がされてしまうケースが出てきてしまいますよね。
だから、弁護側が「この供述調書は事実認定の基礎にしても大丈夫です」と同意しているときなど以外は、誤りが紛れこむことを防ぐために、証人として法廷に出てきてもらうことを原則とし、まずは、「ちゃんと記憶しているとおりに話します」という宣誓をしてもらう、その上で、証言した内容について弁護側からの反対尋問を受けて誤りが紛れ込んでいないかどうかのチェックをしてもらう、そのような過程を経て、これは証拠としての価値があると判断された場合に初めて事実認定の基礎にすることができるというルールになっています。
よく刑事ドラマでもありますよね?
証人が、法廷で「あの日、現場で被告人の顔を確かに見ました!」と証言したのに対し、弁護人が、「あなたは視力が0.1ありませんよね?眼鏡も修理に出していた記録があります!どうやって目視したのですか!?」と詰め寄ったり「あの日の天気を覚えていますか?あの日のあの時間帯、あの場所は局地的な大雨で当時現場はどしゃぶりだった!30メートルも先に位置していたあなたが被告人の顔を目視できるはずなどなかったんですよ!」みたいなあれです。

今回報じられた事件では、弁護側が、被害者の供述調書を証拠とすることに反対しました。
だから、原則どおり証人尋問を実施しようとしたが被害者に拒まれ実施できなかった。
その上で、捜査段階の被害者の供述調書が証拠として採用されたというものです。
弁護側が被害者の供述調書を証拠とすることに反対しているのに、その供述調書を証拠として採用することは例外中の例外。
どういうときにその例外が適用されるかは法律で厳格に定められています。
今回は、その例外用件に当たるのか、私はちょっと疑問に思います。
本来だと、被害者の供述が得られなかったものとして事実認定をしなければならず、他の証拠にも鑑み、万一有罪の心証が得られないのであれば無罪を言い渡すべきこともあり得る事案だったのかなとも思います。

今回、この話題は少しマニアックかなと思ったのですが、でも、現実に起きている出来事なのだから、マニアックなこととして発信を避けるのもおかしいなと思い取り上げてみました。
このようなちょっと込み入った話題を、身近なものとして、わかりやすくお伝えできるよう、スキルを磨きたいと思います。

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