リーガルエッセイ

公開 2020.12.03 更新 2021.07.18

薬物犯罪と再犯抑止

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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「誰かを傷つける犯罪ではない」

先日、俳優が大麻取締法違反の公訴事実で起訴されていた件で、第1回公判期日が開かれたと報じられました。
そして、その期日で、被告人が、法を犯しているという認識はあった一方で、海外では大麻が合法の国もあるし、「誰かを傷つける犯罪ではない」と語ったとも報じられています。
私は、その公判期日を傍聴したわけではないので、被告人が、どのような質問に対し、どのように答えたのかわかりません。
もしかしたら、検察官から、「あなたの中では、どこかに、誰かを傷つける犯罪ではないというような意識があったのではないか」と質問される中で、「そういう意識があったかもしれない」と答えた可能性も否定できず、その文脈によっては、ニュアンスがずいぶん変わってくるのかなと思います。
被告人が、実際どのように考えていたのかはこの報道だけからはわかりませんので、一般論にはなりますが、以前こちらのエッセイでも取り上げたように私は、薬物犯罪のかげには多くの被害者が存在していると思っています。
被告人の立場によって個別の事情は変わってきますが、誰かを確実に傷つける犯罪だと思っています。
そして、そのような思いを持てることこそが、再犯を抑止するのだと思うのです。
薬物犯罪は一般的に再犯傾向が高いと言われています。
でも、自分の行為によって生まれる被害者の存在を認識できていたら、次にもし再犯の誘惑にかられても、自分の行為によって傷つく人の顔を思い浮かべることで踏みとどまることができるかもしれない。
その意味で、もし、今回の件でも、被告人が、今もなお、自身の犯行について誰かを傷つけるものではないと考えているのだとして、その旨法廷でも供述したのだとしたら、もちろん、だれもが薬物犯罪のかげに被害者がいると考えているかはわかりませんが、少なくとも、再犯のおそれに不安を抱く裁判官もいるのではないかなと思います。

報道によれば、被告人が所持していた乾燥大麻の量は10グラムを超えるとのこと。
決して少なくない量です。
大麻取締法違反の量刑は、所持していた薬物の量、前科の有無、認否などによって一定の傾向があります。
初犯で、所持していた大麻草の量が10数グラムだとすると、懲役1年、3年間の執行猶予の判決が言い渡される可能性が高いと思われます。
裁判官は、判決言い渡しの後、被告人に対し、執行猶予期間中の心構えや判決の意味などについてご自身の言葉で語ることがあります。
もしかすると、そのとき、「誰かを傷つけることがない」という点についてのお考えをお話になるかもしれませんね。

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