リーガルエッセイ

公開 2020.12.02 更新 2021.07.18

教員の懲戒処分

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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学校教員の懲戒免職

最近、教員を懲戒免職処分としたという報道を立て続けに目にしました。
生徒2人に柔道技をかけて背骨を圧迫骨折させるなどの重軽傷を負わせたとして傷害罪で起訴された教員を懲戒免職処分にしたという報道がありましたし、電車内で女子中学生に体液をかけたとして暴行罪で逮捕された小学校の教頭を懲戒免職処分にしたという報道もありました。
交際していたという17歳少女にLINEでわいせつ行為を教えたとして県青少年愛護条例違反の罪で罰金刑に処せられたという中学校教員を懲戒免職処分にしたとの発表も。

懲戒免職処分というのは、公務員に対する懲戒処分の中で一番重い処分です。
懲戒処分は、地方公務員に関しては、地方公務員法に定められていて、公務員が職務上の義務に違反し、又は職務を怠った場合や、全体の奉仕者たるにふさわしくない非行のあった場合などに懲戒処分として、戒告(かいこく)、減給、停職又は免職の処分をすることができるとされているのです。

そして、教員にどのような行為があったときに、いかなる懲戒処分をするか、という点について、各教育委員会が指針を公表しています。
たとえば、冒頭で挙げた傷害罪で起訴された教員を懲戒免職処分にした兵庫県教育委員会では、代表的な事例を選び、職員に対する標準的な懲戒処分の種類を掲げたものを公表しており、具体的な処分決定にあたっては、日ごろの勤務態度や非違行為後の対応も総合的に考慮の上で判断するものとしています。
指針の具体的内容を見ると、たとえば体罰に関しては、①体罰を行い、児童生徒に傷害を負わせた職員は、免職、停職又は減給②体罰を行い、児童生徒に精神的影響を生じさせた職員は、免職、停職又は減給③体罰を常習的に行い、隠蔽し、又は特別な支援を要する児童生徒に対して行った職員は、停職又は減給④体罰を行った職員は、減給又は戒告との記載があります。

今回冒頭で挙げた例でいえば、①に該当するため、懲戒免職、停職、減給のいずれかの処分が検討されるべきところ、傷害結果が重いこと、体罰に至る経緯は指導の域におさまるとは言い難い何ら正当化要素がないものであったこと、報道によればこの教員は過去にも体罰による減給等の懲戒処分を受けたことがあったにもかかわらず本件に及んだという事情があることなどによれば、懲戒免職以外の処分は考えられなかったのではないかと思います。

その後も、連日、教員が〇〇の被疑事実で逮捕され、教育委員会は懲戒処分検討中などという報道を目にします。
最近では少しこのような報道に慣れてしまったかのような感覚までありましたが、1人の教員の周りには、何十人という児童、生徒の存在があったはず。
児童、生徒が、教員による非違行為の直接の被害者になっている場合もそうでない場合も、児童、生徒にとって、教員という存在は、家族以外で一番身近な大人ともいえる存在で、教員と過ごす時間は、今後の人生にとって大事なことをたくさん学ぶためのもので、その後の人生に大きな影響を持つものです。
一懲戒事例の裏にいる、そのことをすぐには受け止めきれずに戸惑い、傷つく子どもたちの存在を思うと、連日の報道に何ともやりきれない思いです。

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