リーガルエッセイ

公開 2020.11.27 更新 2021.07.18

刑事補償と国家賠償の違い

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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刑事補償

先日、殺人罪で服役した後、再審無罪が確定した女性に対し、裁判所が、約5997万円の刑事補償を支給する決定をしたと報じられました。
この女性は、逮捕されて以降約13年間の身体拘束を受けていたということです。
刑事補償というのは、身柄拘束をされていた人が無罪の判決を言い渡されたときに、身柄拘束に関して補償を求めることができるというものです。
法律では、1日あたり、1000円以上1万2500円以下の範囲内とされていて、その金額は、拘束の種類、その期間、本人が受けた財産上の損失、得るはずだった利益の喪失、精神上の苦痛、身体上の損傷、警察、検察及び裁判の各機関の故意過失の有無その他一切の事情が考慮して決まるとされています。
報道によれば、この女性に関しては、身柄拘束が13年以上もの長期に渡り、また、無罪判決で捜査が不適切だったと指摘されたことなどの事情を踏まえ、上限額である1日1万2500円の支給となったとのことです。

そして先日、今度は、この女性が、国家賠償法に基づき、国と県に損害賠償を求める準備を進めたと報じられました。

この報道を見て、「すでに6000万円近いお金が支給されたんじゃないの?」と思うかたもいるかもしれません。

でも、刑事補償の話と国家賠償の話は違います。
国家賠償というのは、国または公共団体の公権力の行使にあたる公務員が、その職務を行うにあたって、故意または過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国または公共団体がこれを賠償する責任を負うというものです。
つまり、公務員が、仕事で、故意または過失をもって他人に損害を与えたら、国や公共団体が代わりにお金を払うということ。
身柄拘束に対する補償としての刑事補償とは性質が違います。
女性は、国家賠償請求の訴訟を通じて、再審の判決で「不当」と評価された警察、検察による捜査の実態、その捜査過程の違法性を明らかにしようとしているといえそうです。

なお、刑事補償や国家賠償のほかに、刑事訴訟法上認められている請求もあります。
無罪の判決が確定したとき、国が、被告人だった人に、裁判に必要となった費用の補償をするとされているのです。
裁判に必要となった費用というのは、裁判に出頭するための旅費、日当、宿泊料、弁護人に対する報酬を指します。

このように、無罪となった場合には法律で各種請求が認められています。
でも、もちろん、過ぎた時間は絶対に返ってこない。
このことを常に頭に置いて、不当に被疑者、被告人となった人の時間が奪われることがないよう弁護人の職務を全うしなければならないと改めて思います。

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