リーガルエッセイ

公開 2020.11.06 更新 2021.07.18

子どもの事故は誰の責任?

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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子どもが起こした事故 親の責任は

コロナの感染が拡大する前のことですが、都内の公園に遊びに行った際、子ども用の電動自動車に乗った小学校低学年くらいの男の子が、その公園内で、自動車をかなりのスピードで走らせているのを見たことがありました。
そのとき、子ども用の電動自動車ですが、舞台がゆったりした空気間の公園の中であったせいか、そのスピードはかなり速く見えました。
その日は休日の天気もいい昼間だったので、小さい子どもたちもたくさん走り回って、その中を爆走する電動自動車は、とても危険に見えました。
周囲にいた子どもたちの親御さんが、車に近づかないように自分の子どもの手を引いたり抱っこしたりして避けている様子でした。
私は、このとき、「車に乗っている子どもの親はいったい何をしているのか?」と思い、周囲を見回したのですが、それらしき姿は見えず、そのことに驚いたものでした。

先日、8歳の男児が、河川敷を子ども用モーターバイクで走行していたとき、前方を歩いて横切ろうとした6歳の女児にモーターバイクを衝突させてしまい、女児に骨折などの重いけがを負わせたと報じられました。
事故が起きた当時、男児の父親がその場にいたとも報じられています。
報道だけからは、父親が、モーターバイクを運転する子どもとともに並走していたのか、すぐに声をかけたり手をのばしたりできる距離で見守っていたのか、それとも子どもが視界に入る場所で見守っていたのか、視界に入る場所ですらなかったのか、そのような事実関係はわかりません。
また、河川敷ということではありますが、この場所が、どのような場所として利用されている場所なのかなどもわかりません。
ですので、正確な事実関係をもとに、具体的なコメントをすることは難しいのですが、男児の親は、女児の負ったおけがについて、その治療費等の損害を賠償する責任を負う可能性があります。

普通、人が、不注意で他人にけがを負わせたというとき、その不注意でけがを負わせてしまった人自身が損害賠償責任を負います。
でも、8歳の子どもとなると話は別です。
民法には、「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識(べんしき)するに足りる能力を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない」という規定があります。
この「自己の行為の責任を弁識するに足りる能力」というのはいったい何歳のことをいうのか?ということは条文に書かれておらず、解釈が必要です。
過去の裁判例を見ると、具体的な子どもの判断能力を個別に判断することにはなるので、一概にはいえないのですが、だいたい小学校を卒業する12歳くらいの子どもまでは、この責任を弁識する能力がないとされているようです。
ですから、8歳の子どもが不注意で他人にけがをさせてしまったとしても、その子自身は損害賠償責任を負いません。
では、被害者はいったい誰に損害賠償請求すればいいのか?
同じ民法には、法律で、責任を弁識する能力がないとして法的な責任を負えない者を監督する法定の義務を負う者が、損害を賠償する責任を負うこととしています。
8歳の子どもの場合、これを監督する法定の義務を負う者は、親権者、つまり多くの場合、子どもの親がこれに当たります。
ですから、本件の場合も、この条文に従うと、8歳の男児の親が損害賠償責任を負う可能性があるのです。

ただ、条文には、監督する法定の義務を負う者が責任を免れる場合が例外的に定められています。
監督義務者が、その義務を怠らなかったとき、または、その義務を怠らなくても損害が生じたといえるときです。
監督義務者が義務を怠っていなかったか否かが争いになったら、裁判では、監督義務者のほうで、自分は監督を怠っていなかったこと、または義務を怠らなくても損害は生じたといえることを証明しなければなりません。
なかなかハードルの高い証明であるとは思いますが、過去に、監督義務が否定された裁判例もあります。
今回の事故に関しても、まずは、女子のけがの回復を待ち、治療費等の損害がいったいどの程度発生したのかを明らかにすることになると思います。
その上で、けがを負った女児の親側とモーターバイクを運転していた男児の親側とが話し合うことになると思います。
お子さんがほかのお子さんにけがを負わせてしまった、などでお悩みのかたは、一度、弁護士にご相談ください。
今後どのように進めていくのがよいのか、一緒に考えさせていただきます。

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