リーガルエッセイ

公開 2020.09.08 更新 2021.08.13

「人生観の違い」で離婚

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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先日、ある国会議員のかたが離婚されていたという報道の中で、そのかたが、取材に対し、離婚の理由について「人生観の違いです」と説明されたということが報じられていました。
そして、このニュースを報じるネット記事の多くが、そのタイトルに、「人生観の違いで離婚」と掲げていました。
だれかが離婚したというとき、「原因はなんだったの?」というのは素朴に生じる疑問でしょうから、それにこたえる形でこういうタイトルが多くつけられたのかなとは思うのですが、興味を持っていろいろな記事とこれに対するコメントを読んでいくと、「人生観で離婚」ということにいろいろな見方があることに気付きました。
コメントとして、「人生観の違いで離婚などするはずはないのではないか。ほかに語られない理由があるのだろう」とか「人生観の違いなんて、何年も経なくても、付き合い始めれば結婚前にわかるだろう」などというものがあったのです。

結婚前に相手との「人生観の違い」を判断することは実際とても難しい

私自身は、人生観の違いで離婚を選択、という心情に何も違和感がなく、むしろ、「なるほどな」と思って記事を読んだので、違和感を持つという見方があることが新鮮でした。
考えてみたら、私が「人生観の違いで離婚」に違和感を感じなかったのは、やはり、弁護士として多くのご相談を受ける中で、「人生観の違い」というものを離婚を考えたきっかけとしてお話しされるかたが多いことに原因があるかもしれません。
報道されたかたが、実際どういう点をもって「人生観の違い」とおっしゃったかはわかりませんが、一般論で考えると、夫婦で、それぞれの人生で何を大事だと考えるか、ということが違ってきてしまったことを指して人生観の違いと表現することが多そうです。

そして、夫婦間で、人生で大事だと考えるものが家族という存在なのか、それ以外に優先すべきものがあると考えているのか、それともこれが一番という優先順位をつけること自体ができないと考えているのか、などということについて考え方がずれてくると、それに伴って、たとえば、どこに住むのか、仕事はどうするのか、平日をどのように過ごしたいと考えているか、休日はどう過ごしたいと考えているか、子どもはどこでどうやって育てるか、などという点についても考え方が違ってくることが多いように思います。

また、「人生ではなによりも家族が大事」という点においては夫婦で考え方が一致していても、人によって「大事にする」とはどういうことかが違う場合がありますよね。
いつも一緒にいてできる限り長い時間を過ごし、コミュニケーションを多くとることをもって大事にすることだと考えている人もいれば、たとえ一緒にいなくても、会話をしなくても、お互いが必要だと考えるタイミングでお互いがよりどころとなることが大事にすることだと考えている人もいるかもしれません。
具体的場面で考え方の違いが表面化したときに、まずは、折り合える方法がないか話し合うと思うのです。
でも、話し合ってもそれが見つからない場合は、どちらかが自分の考え方を抑えて相手に合わせることを選択することもあれば、離れることを選択することもあるのだと思います。

「そういう話し合いは結婚する前にするものではないのか?互いの人生観が合うとか、合わない部分があっても尊重できるからと判断して結婚するものではないのか」という声もありそうです。

たしかに、それができたらいいですよね。
でも、実際はそれは難しいかもしれません。
「自分の人生観とは」というものをみなが普段からきちんと認識することってとても難しいと思うからです。
結婚して共同生活が始まって、とか、子どもが生まれて、とか、人生にとって大きな出来事が起きたときにはじめて、普段は意識することもない、自分が人生で大事にしていることについて真剣に考えなければならない事態に直面することがあるように思います。
また、今年になって起きた深刻な自然災害、コロナ感染拡大なども、生き方について真剣に考えざるを得ない事態に直面するきっかけになったと思います。
そして、こういう事態を受けて、相手がどう動いたか、どういう言葉を発していたか、など相手の言動を通してはじめて、「自分はそういう考え方とは違う」「自分はそういう考え方がすきだ」などと自分の考え方を認識できたということもあるのではないかと思うのです。
つまり、結婚し、それ以降に起きるライフイベント、そこで明らかになる相手の対応を経てはじめて、自分の生き方というものが形成されたり、認識したりしていくこともあり、これらをすべて結婚前に予測して相手の人生観と合うか合わないかなどということを判断することは実際とても難しいのではないかと思うのです。

「人生観の違い」を理由に離婚が認められるのか

コロナ感染拡大の中、「コロナ離婚」などという言葉が報じられたりしましたね。
これまでは、未曽有の事態に直面し、ただ毎日を乗り越えるだけで精一杯で、自粛生活などを経て感じた夫婦の間の違和感、人生観の違いについて、言語化したり、今後について落ち着いて考えたりする余裕すらなかったかもしれず、もしかしたら、コロナをきっかけに人生観の違いなどを認識して離婚に関して実際動き出すかたが増えるのはこれからなのかななどと思っています。
人生観の違いを意識し、パートナーと別の道を歩みたいと考えたときに、相手も全く同じ意見なのであれば、あまりトラブルもないのかもしれません。
でも、人生観の違いは、相手とこのまま結婚生活を続けるかどうかというところの選択にも当然影響してくる可能性があり、自分は離婚したいけれど、相手は離婚したくないという意向であるということもあります。
相手が離婚したくない場合に、「人生観の違い」を理由に裁判を起こした場合(その前に調停を経る必要があります)、離婚が認められる場合ばかりではありません。
事情を踏まえて、目標とするところにどう作戦を立てて進めていくか、慎重な検討が必要になります。
離婚についてお悩みのかたは、お気軽に弁護士にご相談ください。

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