リーガルエッセイ

公開 2020.09.02 更新 2021.08.13

離婚の話し合い 「お互い弁護士立てるとややこしくなる」って本当?

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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先日、あるバラエティー番組を見ていたら、少し前に離婚されたという芸能人のかたが、離婚の話し合いにあたり、相手は弁護士を立てていたが、自分は弁護士をあえて立てなかったという話をされていました。
そして、その理由について、自分も弁護士を立てるとややこしくなるから、スムーズに進ませるためにあえて立てなかったという趣旨の発言をされていたのです。
「なるほど、そういう考え方もあるのだな」と思いながら見ていたのですが、ふと、自分がお客様から「弁護士をつけるとややこしくなりますか?」と聞かれたらどう答えるかなと考えてみました。

離婚成立までのスピード? 「スムーズ」というのは何か

前提として、「スムーズ」というのは何か、というところですが、まず、離婚成立までのスピードという観点がありそうですよね。
では、当事者双方が弁護士に依頼して弁護士同士の話し合いにしたら、果たして、離婚成立までのスピードは遅くなるのか?片方だけでも弁護士に依頼しないほうが解決スピードは速いのか、というと、そういうケースばかりではないかなと思います。
やはり当事者のかたは、ご本人なので、どうしても相手に対する不信感や憤りなどをぬぐえず、やりとりの端々にそのような感情が噴出してしまうことってあると思います。
そうなると、その感情があるがゆえに、淡々と条件面の話し合いを重ねるということが難しい場合もあるでしょう。当然のことです。
その場合、双方が弁護士をつけて、弁護士同士の話し合いにすれば、感情面は一次的に代理人である弁護士が受け止め、そこで消化し、話し合いに必要な部分をピックアップして相手の代理人に伝える、というように、弁護士が交通整理をすることで、核心から離れることなく、すべき話し合いをすることができ、結果として解決に早くたどりつけることもあります。

「スムーズ」の言葉の中には、結局スピードというところとつながるのだとは思いますが、「議論を紛糾させずに」とか「あまり問題を大きくせずに」といった意味合いも含まれていそうです。
たしかに、表面的に、話し合いが順調に進んでいて、あとちょっとで折り合いがつきそうという段階で弁護士をつけたら、弁護士が事案を把握するための時間もかかるでしょうし、弁護士を入れることで、これまで問題とされていなかったことが新たに争点化され、解決まで時間がかかるということもあるかもしれません。
でも、弁護士を入れることで争点化されたことについて話し合いをすることで使う時間って無駄な時間なのでしょうか?

弁護士がその問題点をつつかなければ、問題として気付かないままに話し合いを進められ、離婚成立が早かったかもしれません。
相手にだけ弁護士がついていて、自分は弁護士をつけていなかったという場合、「自分は条件なんてなんでもいいからとにかく早く離婚できさえすればいい」というなら別です。
でもそうでないなら、多少時間がかかっても、少なくとも一度自分も弁護士に相談してみること、そして、そのアドバイスを聞いて必要だと感じたら、仮に少し時間がかかっても弁護士に依頼して話し合いをしてもらう、ということも大事な場合もあります。

相手が依頼した弁護士は、あくまでも「相手の代理人」

もしかしたら、自分は弁護士に依頼しなくても、相手に弁護士がついているのだから、法的に見ておかしな結論にはならないだろうと期待されるかたもいるかもしれません。
でも、相手の依頼した弁護士は、あくまでも相手の代理人という立場です。
わざわざ対立する立場にあるあなたが有利になるための方法を丁寧に教えてくれたりはしません。
相手の弁護士が主張していることは、相手の立場に立った主張であって、もっと自分に有利な主張をする余地があるのではないか、これから合意しようとしている内容には自分が気づいていないリスクが潜んでいるのではないかということをきちんとチェックすることは大事なことです。
そして、その結果、やはり自分の言い分を主張するためには、弁護士相手に自分で交渉するのでなく、自分も弁護士に依頼したほうがよいというケースも多々あると思います。
たとえば、養育費の支払いなどは払う側にとっても払われる側にとっても、長期に及ぶこともあり、生活に直結する問題です。
リスクや問題点を知った上でスピード解決を重視して選択した結果であればいいのですが、リスクなどに気付かずに選択してしまうのは危険ですし、交渉の過程で、算定のベースとなる収入をどう考えるか、加算・減額要素がないか、など専門知識を要する場面もあり得ます。

「自分にはどういう選択肢があるのか」を正確に知ることも大事

解決までのスピードは大事です。
でも、前提として、自分にはどういう選択肢があるのか、ということを正確に知ることが大事で、選択肢の存在を知った上で、自分は何よりも離婚までのスピードや相手と争わずに離婚することを優先したいのか、そして、スピード重視とした場合にも、本件では自分自身で交渉したほうがスムーズに進むのか、仮に自分で交渉したほうが早い解決を目指せそうだとしても、弁護士を代理人にして交渉することで長期的に見て自分にとってスピードよりも優先すべき事項は本当にないか、慎重に検討してみたほうがいいのかなと思います。

ですから、「弁護士に頼むとややこしくなる」「弁護士をつけないほうがスムーズ」というのは、もちろんそういうケース、そういう側面があることは否めないけれど、そうでないケースもあるし、また、スピードを選択する前に正確な知識を得る必要があって、そのためには少なくとも弁護士に相談し、弁護士に依頼することも含む選択肢が自分にあること、そうすることで自分が得るメリットを知った上で判断した方がいいのかなと思います(冒頭に挙げた芸能人のかたが弁護士に相談されたかどうかはわかりませんので、あくまでも一般論で申し上げています)。

私が弁護士だから、弁護士に頼んだほうがいいという立場なんだろうと思われるかもしれないですね。
でも、私も、ご相談を受けたときに、「これは、弁護士が入る必要がないな。かえってこじれるかもしれないな」と思うときには、率直にそのようにお伝えし、お客様が弁護士を立てることを希望されていても、まずは、ご自身でこういうことをやってみてください、とアドバイスさせて頂くことがあります。
弁護士に依頼するのもしないのもどちらも選択できます。
ただ、それを選択する前に、一度、弁護士に相談してみることをお勧めします。

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