リーガルエッセイ

公開 2020.08.19 更新 2021.08.13

「公訴棄却」とは?

記事を執筆した弁護士
Authense法律事務所
弁護士 
(第二東京弁護士会)
慶應義塾大学法学部法律学科卒業。司法試験に合格後、検察官任官。約6年間にわたり、東京地検、大阪地検、千葉地検、静岡地検などで捜査、公判を数多く担当。検察官退官後は、弁護士にキャリアチェンジ。現在は、刑事事件、離婚等家事事件、一般民事事件を担当するとともに、上場会社の社外役員を務める。令和2年3月には、CFE(公認不正検査士)に認定。メディア取材にも積極的に対応している。
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先日、参院選をめぐり公職選挙法違反の罪で起訴された被告人が、近く始まる裁判で無罪を主張するとともに、「検察が、地元議員らとの間で違法な司法取引をした」と主張して、公訴棄却を求める方針であると報じられました。
報道の限りですので、実際の弁護方針はわかりませんが、一般的に、裁判を控えた事件の報道で、「公訴事実を認める方針」とか「事実を争い、無罪主張をする方針」とかいう言葉はよく聞くと思うのですが、「公訴棄却を求める方針」というのは、あまり聞いたことがないというかたもいるのではないでしょうか。
私も、検察官として裁判に立っていたとき、弁護人が公訴棄却を求めると主張してきたことも、自分が弁護人として公訴棄却を求めたこともありません。
同じ読み方で、「控訴棄却」というものがあります。

これは、一審で出た判決に対し、不服申立てである控訴をしたものの、その不服申し立てが認められなかったことを指します。

有罪無罪の判断をせずに裁判を打ち切る

公訴棄却とは、有罪なのか、無罪なのかということを白黒はっきりつけずに、裁判自体を打ち切ってしまう制度です。
もちろん、裁判官が、証拠で決めきれないからやむを得ずこの判断をするなどということではありません。
刑事裁判では、裁判官が有罪の心証を得られなかったら無罪になります。

では、公訴棄却となるのはどんなときなのか?
これは法律に定められています。
口頭弁論を開かず、法廷で検察官や弁護人の言い分を聞くなどしなくても決定で裁判を打ち切ることができる場合として、たとえば、被告人が死亡した場合、検察官が公訴を取り消した場合、起訴状謄本が起訴後2か月以内に被告人側に送達されなかった場合などがあります。
口頭弁論を開いた上で、判決によって裁判を打ち切ることができる場合としては、たとえば、同じ裁判所に二重起訴がされている場合、被告人に対する裁判権がない場合、公訴提起の手続がその規定に違反して無効な場合などがあります。

もし、報道のように、違法な司法取引による起訴が無効と主張するということであれば、これは、「公訴提起の手続がその規定に違反して無効な場合」(刑事訴訟法338条4号)にあたるとして公訴棄却の判決を求めるという主張なのだと思います。
昨年、カルロス・ゴーン氏の当時の弁護人が、東京地検特捜部と日産の執行役員ら幹部が行った司法取引が違法であり、国内外で行われた重大な違法捜査に基づいて起訴されたとして公訴棄却の判決を求める方針であると報じられたことがありましたが、起訴に至る手続きの違法性を主張して起訴自体が無効であるとする点において共通しているといえそうです。

第1回公判期日は8月25日に開かれる予定であると報じられました。
今後の裁判に注目していきます。

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